結論
私は病院に勤務している理学療法士です。
2019年現在で11年目になります。
特に肩の腱板断裂という病気のリハビリをすることが多いです。
※腱板断裂についてはこちらの記事をご覧ください。
五十肩と言われて治療しているけど痛みがとれません。 本当に五十肩ですか? 腱板断裂という病気もあるようですが、それとの違いは何ですか? こんな疑問にお答えします。 私は現役の理学療法士をしており、毎日肩に症状のある患者さんを見て[…]
以前、腱板断裂の手術をする予定の患者さんに、こんなことを言われました。
・医者の「治る」は手術によって腱板がくっつくこと
・患者さんの「治る」は切れる前と同じように動かせること
肩の腱が切れると治らない?:腱板断裂の種類について
・完全断裂:腱板が完全に切れている状態
・中断裂:1㎝以上3㎝未満(まずは保存療法から)
・大断裂:3㎝以上5㎝未満(ほとんどの場合は手術)
・広範囲断裂:5㎝以上(一般的に普通の手術では困難)
この4つに分類されます。
詳細な切れかたや断裂の大きさは、実際に内視鏡で確認しないと分かりませんが、MRIを使うことで、大まかな筋肉の状態を確認し、治療方針が決まります。
不全断裂や小・中断裂の場合は、治療の第一選択としては、投薬・注射・リハビリといった保存的治療を行うことが一般的です。
この注射に関しての記事はこちらにまとめているので参考にして下さい。
私は病院で理学療法士として勤務し、11年目になります。主に肩に関連する病気の方を診ているのですが、先日肩に痛みのある患者さんにこんなことを聞かれました。 今日肩が痛くて、お医者さんに注射されたんですけど、これって何の注射ですか? […]
注射やリハビリで症状がおさまれば、手術はしないことが多いですが、それでも痛みが強い場合などは手術になります。
肩の腱が切れると治らない?:保存療法で腱板断裂は治るのか?
では、腱板断裂を保存療法で治療した場合に治るのか?
治りません(^-^;
みなさんだったら、「もうすっかり良くなりましたね」や「治りましたね」と言われたら、どう思いますか?
てっきり、切れていた腱板がくっついて元通りになったと思いませんか?
ここで言っている「治る」や「症状がおさまる」は、痛みがなくなる、肩の動きが良くなることを言っています。
決して腱板がくっついて元通りになったわけではないので気を付けて下さい。
一度切れた腱板は自然にはくっつきません。(まれに例外もありますが)
注射やリハビリで痛みがとれて、肩が動くようにはなります。
でも、治ってはいないのです。
今は一部しか切れていない腱板が数年後に大きくなる可能性もあります。
では必ず手術をする必要があるのか?
と言われると悩ましいところです。
今の痛みの状態と肩の動く範囲で、日常生活に困っていないのであれば、そのままでもいいかもしれません。
ただし、筋力は落ちてしまう人が多いため、スポーツや重労働を今後も続けていくような若い人であれば、手術を考える必要もあるかもしれません。
ですが、手術と簡単に言っても、ものすごく時間がかかります。
お医者さんはあまり詳しく、術後の話もしないと思いますので、この記事を参考にしてみて下さい。
肩の腱板断裂という病気をご存じですか? 肩には腱板という4つの筋肉がありますが、そのうちのどれかが切れているまたは傷ついている状態です。 原因としては ・久しぶりにキャッチポールをして痛くなった ・バレーボールでブロックしたら痛くなった[…]
この手術後の流れと仕事や家庭との兼ね合いで決めるしかないかと思います。
肩の腱が切れると治らない?:手術療法で腱板断裂は治るのか?
では、手術をすれば腱板断裂は治りますよね?
治ります(^^)
ただし、ここで言っている「治る」は腱板がくっつくことを言っています。
ありがとうございます!
ちょっと待ってください!!
たしかに、手術をすれば、腱板はくっつきます。
しかし、元通りではないのです。
まず、上記の記事でも書いてますが、手術後は固定期間というものがあり、最短でも4週間、長いところでは12週間も手術した肩を動かすことができません。
その後、自分で肩を動かす練習をしていくため、ものすごく時間がかかります。
さらに、スポーツや重労働を行ってもいい許可がでるのが、手術から6ヶ月たってからです。
そのため、十分に肩を動かせるのは手術後1年はみておかないといけません。
ですが、お医者さんはMRIでみると腱板はくっついているので、「手術は成功です。しっかりくっついて治っていますよ。」となります。
また、その他のお医者さんの治っている判断材料として
・肩の動く範囲
・肩の筋力
・アンケート形式のスコアの点数
これらを全て数値化し、判断することがあります。
しかし、これもあくまでも決められた動きと、アンケートしかないこと、また手術前の状態や反対側と比べてどうかという判断になります。
理学療法士の目線で言うと、肩は動いているけど代償(肩が動かない分、その他の場所が頑張って動かそうとすること)があるため、見た目上は動いていますが、実用的でない人もたくさんいます。
その点をお医者さんは、あまり重要視していな印象があります。
なので、あくまでもお医者さんの「治る」は
・数値上、良くなっていること
この2点で判断していることが多いです。
肩の腱が切れると治らない?:実際の患者さんの声は?
いろいろな方の話を聞きますが、その一例としては
・動くけど、痛みがとれない
・重い物を持てないから仕事ができない
・普段は問題ないけど、いつもと違う動きをすると痛むことがある
・次はもう手術したくありません
などなど、これはあくまでもネガティブな意見だけですよ。
手術してよかった、という意見はもちろん多くありますが、100%ではないということです。
以前、腱板断裂の手術をした人に「手術をして満足しているか?」というアンケートをとったことがあります。
手術後1年の時に調査したのですが、今の肩の状態に満足している人は
約70%弱でした。
これを多いととるか、少ないととるかはみなさんの判断によるとは思いますが、
約30%の人は「もっと良くなると思っていた」、「手術前の方がよかった」、という意見もあるということを知っておいて下さい。
肩の腱が切れると治らない?:まとめ
一言でいうとこうなるかなと思います。
手術である以上、100%の成功はまずありえないため、仕方のない部分もあると思います。
医療技術はどんどん発展しているので、手術の精度も上がってくるでしょう。
しかし、それでも満足できない人がいます。
その人たちを少しでも満足させられるように私たち理学療法士がいると思っています。
私たちに、腱板をくっつけることはできませんが、体の使い方や代償をなくして、痛みなく動かせるようにお手伝いすることはできます。
もし、手術後で状態が悪く、お医者さんにも見放されたと思っている人は、上手な理学療法士を見つけるのがいいかもしれませんね。
もちろん私もみなさんを満足させられるように精進していきます。
少しでも参考になればうれしいです(^^)